お散歩に出る前に大切なこと
子犬の社会化には、音・人・モノ・環境など…たくさんの“はじめて”があります。
その中でも「お散歩」はとても大事な機会の一つ。
でも、いきなり外を歩ける子なんていません。
お散歩に出るためにも、実はいくつかの準備が必要なんです。
この準備ができて、外の世界が“安心で快適”に感じられるようになって、
はじめてお散歩中に出会ういろんな人・犬・モノとの出会いが「社会化のチャンス」になります。
お散歩のための社会化:5つのステップ
Step1:外に出る前の心と体の準備

お散歩デビューは、まず「おうちの中」からスタート!
このステップでは次の 2つの準備 をしていきます。
ハーネス・カラー・リードに慣れる
お散歩の前に、まずは体につける道具に慣れることが大切です。いきなりハーネスやリードをつけようとしても、子犬にとってはびっくりすることも。段階を追って、少しずつ慣らしていきましょう。
カラーよりハーネスがおすすめ。なるべく着脱しやすいものを選びましょう。
リードは180センチがおすすめ。日本のスタンダード(110センチ)は社会化には不向きです。
ハーネスを体にそっとあてたり、カラーを首に軽くのせてみます。無理につけず、「乗せてみる」くらいの感覚でOK。体にあてたり首に乗せたりした後にはおやつをあげましょう。
頻度:毎日1〜2回
期間:1〜3日程度
時間:1回1〜2分
あてても気にしなそうなら、次は実際につけてみます。
実際にハーネスやカラーを装着し、数分だけそのまま過ごします。最初は人と遊ぶとき、知育トイで遊ぶときにつけて、「つける=楽しいこと」と印象付けるのがポイント。
頻度:1日1回から始めて、慣れたら日常的に
期間:3〜7日(ごはんや遊びのタイミングで)
時間:最初は1〜3分 → 徐々に10分以上へ
違和感なく過ごせるようになったら、リードをつけてみましょう。
家の中でリードをつけて、子犬と一緒にゆっくり歩いてみます。子犬について行ってOK。リードは引っぱらず、たるんだ状態をキープしましょう。子犬がリードを気にせず歩けたら大成功!
頻度:毎日1回〜(できれば複数回)
期間:3〜7日程度
時間:最初は3分くらい → 徐々に10分〜15分
リードをつけても気にせず過ごせるようになったら、卒業です♪
外の音に慣れる
子犬がハーネスやリードに慣れている期間に外の音に慣らしましょう。
**窓から聞こえる車や人の声、自然の音などを“なんとなく聞いておく”**だけで十分!
- 窓を少し開けて、外の音が自然に聞こえる環境にする
- 子犬は自由に過ごしていてOK(寝てても遊んでてもOK)
- 音に驚いたり吠えた時はいったん窓を閉め、それ以上刺激が強くならないように注意
頻度:1日1〜2回程度
期間:1週間〜2週間ほど(ハーネス・カラー・リードに慣れる期間)
時間:最初は1回5〜10分程度
外の物音(車、人の声、自転車のベル、犬の鳴き声など)に対して、過剰に反応せずに室内で落ち着いて過ごせるようになったら卒業です♪
Step2:外に出てみる

玄関の扉を開けて、外の空気を感じたり、匂いを嗅いだり、音を聞いたりしてみよう。
「歩く」ことが目的ではなく、「外に出ること」に慣れる段階。
- 玄関の扉を開け、子犬が自由に出入りできるようにする
→ 無理に外へ連れ出さず、自分のペースで出入りできる状態に。 - リードをつけた状態で、一緒に玄関へ行ってみる
→玄関でしばらく過ごす(外を眺めたり、匂いを感じたり) - 飼い主さんは玄関の中でリードを持っておく
- 子犬が出たがるようなら外に出てもOK
→出たり戻ったりを自由にできるようにしておこう
頻度:1日1〜2回程度
期間:2〜5日(慣れに応じて)
時間:1回あたり5〜10分程度
玄関で落ち着いていられる。扉の向こうに興味を見っている様子が見られれば次のステップへ♪
- 子犬が自分から外に出たら、そのままその場でしばらく過ごす
- 歩くのが目的ではなく、匂いを嗅いだり、周囲を観察したりする時間に
- 飼い主さんは玄関の外に出て、リードをもってのんびりする
→キャンプ用のいすなどで座っててもOK - 子犬が横たわってくつろぎ始めるのを待つ
→くつろぎ始めて2~3分経ったら練習終了でOK
頻度:1日1〜2回程度
期間:3〜7日(子犬の様子に応じて)
時間:1回あたり 最大45〜60分
外に出てから5〜10分くらいで自然にくつろげるようになったら次のステップへ♪
Step3:ちょっと歩いてみる?

「外にいても安心」と感じながら、少しずつ行動範囲を広げる練習。
このステップでは、「たくさん歩くこと」が目的ではなく、「安心して歩ける」場所を見つけるのがゴールです。
- 家から半径5〜10mほどの範囲で、自由にウロウロ
- 匂い嗅ぎ、立ち止まっっているときは見守る
- 遠くに行こうとしたら飼い主さんが距離を制限(5〜10m)
→リードを引っ張るはNG、それ以上行けないように止めるだけでOK - 帰るときはリードを緩めながら帰宅方向へ。ついてきたらご褒美♪
- 人や犬には合わない方が良い
→まだ外に慣れていないので人や犬に合わせるのは慌てすぎ・・
頻度:1日1〜2回程度
期間:1〜2週間(慣れに応じて)
時間:1回あたり15〜20分程度
玄関から5〜10メートルの範囲を、興奮せずに、飼い主さんをちらちら気にしながら落ち着いて歩けるようになったら次のステップへ♪
Step4:ちょっと遠くまで行ってみる?

自分の足で歩きながら、少しずつ知らない道・新しい場所を体験していくこと
外の世界に対して、“安心して探検できる自信”を育てるステップ
- 「いつもの道+ちょっとだけ違う」を基本に少しずつ広範囲に
→1~3回目:角を1本曲がってみる、5メートル先のにおいをかいでみる
→4~6回目:曲がり角の先に行ける/ちょっと違う足場(砂利・草・舗装路)を歩く
→7回目以降:家の周り1ブロックくらいの範囲を目指す - 子犬の反応をよく観察する
→歩いてる間、リードはなるべく緩く
→立ち止まったら見守る。無理に進ませない
→興味があれば進む、嫌がったら引き返す。それでOK! - 帰りたそうにしたら迷わずUターン
→最後はまたStep3のエリア(玄関周辺)でリラックスして終えるのが理想
→「帰れる」「戻れる」安心感が探検を後押しする - 人や犬、車などとは十分に距離をとって
→Step3同様、まだまだ外慣れ中、犬や人へのご挨拶は時期尚早です。
頻度:1日1〜2回程度
期間:1〜2週間(慣れに応じて)
時間:1回あたり15〜20分程度
子犬が自分の足で一周し、落ち着いて戻ってこれたら大成功!
「社会化のためのお散歩」から、「日常としての楽しい散歩」に近づいてます♪
Step5:公園に行こう!

公園のベンチで、のんびりしてみよう
外の世界の中でも特ににぎやかで開かれた“公共の場”に慣れること
ただし歩き回るのが目的ではなく、**「ここでも落ち着いて過ごせる」**を目指す
- 静かな時間帯の公園を選ぶ(朝早め or 平日の昼など)
- ベンチに座って、子犬はリードをつけたまま足元で自由に過ごさせる
→座ったまま外の空気・音・においを感じる
→犬が周囲を観察してるだけでもOK! - フセたり、ウトウトする様子が見られたら大成功!
- おやつをゆっくり与えたり、知育トイで遊んでもOK
頻度:1日1〜2回程度
期間:1〜2週間(慣れに応じて)
時間:1回あたり30分程度
公園の中でベンチに座って10〜20分ほど、犬がフセてのんびりできるようになったら卒業!大きな通りや商店街など色々な場所にチャレンジしましょう♪
抱っこ散歩ってした方が良いの?
子犬期にワクチンがまだ完了してなくても「社会化」は必要だから・・これは理屈としては正しい。でも・・・
抱っこ散歩の落とし穴
犬のペースを無視してしまいがち
- 抱っこ=自分の意志で距離や方向を変えられない
→「逃げたい・避けたい」刺激からも逃れられない - 飼い主は「ほら、見てごらん♪」って好意的でも、犬は「なんでこんな怖いの目の前で浴びるの!?」となってることがある
抱っこ=常に安心とは限らない
- 特に抱っこされ慣れてない子や、身体を拘束されるのが苦手な子は、それ自体がストレスになる
- かえって「外=不快なことが起きる場所」って印象がつくことも
情報処理が難しくなる
- 地面のにおい・風・素材など、犬が感じ取りたい「世界の情報」にアクセスできない
→ 五感が制限されたまま刺激だけ浴びるのは、学習としても中途半端
抱っこ散歩をするなら
- 外の世界の雰囲気だけ感じさせたい
→抱っこはその場で静かに座って過ごすスタイルで(=移動はしない) - においや風を感じさせたい
→ベランダなどで下ろさず一緒に佇むだけでも十分効果あり - 子犬の呼吸、身体のこわばりなどで気持ちが読み取れるなら多少の移動もあり
結局抱っこ散歩って必要?
抱っこ散歩はしても良いけど「必須ではない」。やらなくても社会化はできる。
なぜなら、子犬のペースで「見て・聞いて・感じて・処理する」ことの方が重要だから
- 社会化って「〇〇を見せること」じゃなくて、「犬がどう感じて、それをどう処理したか」が大事
- 抱っこ散歩だと、自分で距離や行動を選べない=処理しづらいことが多い
人や犬とのご挨拶

Step3~5で人や犬、車やバイクと遭遇した場合はどうしたら良いの?
人に会ったとき
- 犬が気にしてても見守るだけ。無理に近づけない・話しかけない
- 飼い主さん自身が落ち着いてその場に立ち、「なんでもないよ〜」という雰囲気で過ごす
他の犬に会ったとき
- 十分な距離を取る
- 相手の犬が接近してくる場合は離れる、もしくは飼い主さんが自分の体でブロックしてあげる
車やバイク、自転車に出会ったとき
- 距離をとれるなら少し脇に寄って、静かにやり過ごすのがベスト
- 犬が反応しても「落ち着くまで待つ」スタンスで
- 音やスピードにびっくりしても止まって観察させてOK
「他の犬との挨拶」は社会化の中でも一番誤解されがちなテーマ
タイミングを間違えると、その後の犬同士の関係性にも大きな影響を与えることがあります。
他の犬と「挨拶してOK」になるタイミングはステップ5が安定してからがおすすめです。
以下4つの条件をすべて満たしたら、挨拶してもOKです♪
- 社会化ステップ⑤が安定している
→公園や外で犬が落ち着いて過ごせる状態が日常的にできている
→初めての刺激や環境でもパニックにならずに自分で対処できている
→「ただ外にいる」だけでなく、外を楽しめるようになっている - 子犬の様子を観察
→リードが緩んでいて、自分から近づこうとする様子がある
→吠えてない・引っ張ってない・フリーズしてない
→相手を見て耳・尾・身体に余裕がある(柔らかい動き) - 相手の犬の様子を観察
→相手の犬も落ち着いている・視線が柔らかい・動きがゆっくり
→リードがピンと張っていたり、相手が突進してるようならNG!
→そもそも「挨拶が得意じゃなさそう」な犬なら無理に近づかない - 飼い主さん同士の同意
→相手の飼い主さんも子犬が「犬に社会化中であること」を理解している
→無理に挨拶を求めてくる相手(=犬を近づけようとする人)は避けるのが◎
まとめ
子犬にとっての初めてのお散歩は、「歩けた距離」や「出会えた刺激の数」ではなく、
どれだけ安心して、心地よく過ごせたかが何よりも大切です。
いきなり外の世界に連れ出すのではなく、
その子のペースに合わせて、準備→一歩→冒険へと段階を踏むことが、
その後の犬生に大きな安心感と自信を育てます。
焦らず、比べず、ゆっくりと。
「一緒に外を楽しめる」その日を目指して、コツコツ育てていきましょう♪




ハーネスやカラー、リードを子犬の近くに置いておき、自由に匂いをかがせたり、触れたりできるようにしましょう。道具が置いてあっても気にしなくなるまで続けましょう。
頻度:毎日1〜2回
期間:1〜3日(怖がる場合はもっと長く)
時間:1回1〜2分でOK
道具を見ても怖がらず、自然に近づけるようになったら次へ。